- 萌芽期には多くの企業が参入し、多くの製品イノベーション(product innovation)が発生するが、支配的なデザイン(ドミナント・デザイン)の登場を境に、参入企業は著しく減少する。また、製品イノベーションが減少し、工程イノベーション(process innovation)が増加してくるということである。彼らは、この原因を以下のように分析している。
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- 萌芽期には、どの企業も市場を支配していない。どの企業の製品も完璧には作られていない。どの企業も製造技術を習得していないし、チャネルをコントロールしていない。顧客は理想的な製品デザイン(product design)や望ましい技術についての感覚を持っていない。このような環境は、多くの企業にとって市場参入に有利に働く。
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- 新規参入や新製品はどれもある種の実験であり、市場からのフィードバックやデータが得られ新製品開発が急ピッチで進められる。そして究極的には1つのモデルを採る。そのモデルとはたいていの特徴を備え、たいていのユーザーを満足させる「ドミナント・デザイン」である。
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- ドミナント・デザインの出現後は参入企業は著しく減少する。また、ドミナント・デザインの発生がイノベーションの性格を変化させる。ドミナント・デザインには生産やその他の補完的な経済性の追及を可能とするような、標準化を強いたり助長する効果があるため、成立後には、製品の性能と同様に、その費用や規模を基礎とした競争、つまり工程イノベーションの競争が起き始める。
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- 工程イノベーションの競争は、製品イノベーションを制約する。工程イノベーションの結果として、より体系だった工程で生産できるようになると、組織内の小グループ間の相互依存性が増加し、製品イノベーションを困難で費用のかかるものにしてしまうからである。
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- しかし、ドミナント・デザインだけでは、新規企業間、あるいは既存企業間で成否が異なることは説明できない。
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- 企業は既存の優良顧客の期待に応えようとする。そのため、従来から求められている性能を向上させる技術に投資することになる。成功している企業であるほど、顧客との結びつきが強くなり、この傾向が高まる。
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- 破壊的技術が必要とされるのは、最初は小さな市場であり、既存の大企業にとっては、うまみのない市場である。そのため、破壊的技術の必要性に気付いていたとしても、社内的に投資が正当化されることはない。
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- 既存の大企業はい綿密な市場調査と精緻な事業計画によって、事業を推進する。しかし、そもそも今まで存在しなかった市場を分析・予測をしたり、計画を立てることはできない。従来のアプローチ方法では破壊的技術の必要性を予測することができない。
- 新技術に対抗するため既存技術の改良が進むことを、帆船と蒸気船の関係にたとえて「帆船効果」という。
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- 常に勝ち続ける企業は無いということである。クリステンセンによる『イノベーションのジレンマ』で示されたように、優れた企業であればあるほど、不連続な新しいフェーズへの移行に失敗している。
- 藤本隆宏先生の『日本のもの造り哲学』の中で整理されているものですが、モジュール、すり合わせを比較優位の観点から見ると、どういうふうに整理されるか。
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- 日本は得意なところはどこか。オペレーション重視のすり合わせ型製品。
- 欧州ではデザイン・ブランド重視のすり合わせ型製品。
- 米国は知的集約的なオープン・モジュラー製品。
- 韓国も資本集約的なオープン・モジュラー製品。
- 中国は労働集約的なオープン・モジュラー製品。
- ASEANは労働集約的なすり合わせ型製品となっています。
- ニコン・キャノンはユーザーニーズを聞き出す場を特定の顧客に求めたのに対して、ASMLは、多くのユーザーが所属するIMECというコンソーシアムと進めたという点である。
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- ユーザー間である程度コンセンサス(関係者の意見の一致)が得られた装置仕様をASMLは入手する事ができるのである。
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- 日本企業が、手先の器用さ、長期雇用に確定要素起起因される長期的な知の蓄積、垂直統合型組織によるすり合わせ型ものづくりを、むやみに日本企業の比較優位として神聖視してはいけないことを示唆している。21世紀型のものづくりは、摺り合わせと組み合わせを互いに進化させながらスパイラルな共進化を促すことである。
- 当時と今とでは、労働慣行をはじめ経済の仕組みがまったく違います。
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- すり合わせ型のものづくりや長期的かつ密接な企業間関係も、実は(第二次世界大戦)戦後の産物です。
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- 戦前の日本の製造業は、むしろモジュール型であり、市場経済の原理でより空間的移動が起きやすかったといえます。
- IBMはガースナーが就任するまでは、基本的にはメインフレーム一本の会社だった。もちろんパソコン事業などもあったが、結局そこまで本気ではなかったらしい。
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- でも、メインフレームに関しては、半導体からサービスに至るまで必要なものは全て持っていた。IBMはそれを他社製品と互換性の無いクローズドな形で、セットで提供していた。完全な垂直統合の会社で、これが60年代、70年代のIBMの栄光の根幹だった。
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- ところが、業界は水平化し、垂直統合のメインフレームの仕組みは崩れはじめた。一部の分野では、競合のほうが競争力のある商品を提供するようになった。例えば、アプリケーションではSAP、OSではマイクロソフトというように。それに惹かれた顧客が、根こそぎ持っていかれるということが起こっていた。
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- ガースナーがやったことのうち、最大の成果のひとつは、この垂直統合を分割し、一つ一つのレイヤーをオープン化して、他社製品と互換性を持たせたこと、そして、競争力がなくなっている分野からは完全に撤退したことだ。
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- 更に、サーバやソフトを売る製造業ではなく、顧客のニーズに合わせて、自社・他社問わず製品を組み合わせてシステムをつくり、必要なITスキルを提供する、サービスの会社としてIBMを生まれ変わらせたことだ。
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- IBMは実際、偉大な企業なのだと思う。正しい采配を振れば、それに応えて、復活を支える強い意志を持った優秀な社員がおり、企業文化がある。一方で、その正しい采配を振ることがいかに大切で、それはどんな智恵と胆力とリーダーシップが必要か。偉大な経営者に学ぶことは多い。
○ドミナントデザインについては下記PDFなども参考になるかも
東北学院大学目代研究室2009年度経営戦略論第20回経営戦略各論(1)ドミナント・デザインと経営戦略[PDF]
○イノベーションなどの書籍一覧についてはこことか
OUTLOGICONLINE-Bibliography
■参考になるかもしれないメモ
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- 夏野氏は、スマートフォンの前提となる回線は3Gではなく、Wi-Fiであり、主要な機能が音声通話でなくネット接続機能であるのもパソコンの延長だから。iモードのブラウザがフルブラウザでない点も、通信速度が遅く回線が細かったためだとした。
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- Googleの目的はAndroidの普及ではなく、Googleの各サービスの利用者を拡大するための手段でしかない
- 個人でもAPIを上手く活用すれば、サービスのクローンが作れてしまうと言うのが、TwitterのAPIがいかにオープンかと言うことの証明だろう。
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- iPhoneアプリのようなグローバルなプラットフォームができてしまったことで、さらに世界同時リリース、同時ブレイクの流れが加速しつつある。
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- いくら日本の現状のサービスが先進的でも、世界中の開発者がよってたかっていじるサービスと、日本のベンチャー企業が一社単独で開発しているサービスでは、残念ながら長期的な勝負はみえている。世界中の開発者がよってたかっていじりたくなるようなオープンなAPIを提供すること。
アップルの復活をどうとらえるかが鍵になると思います。
クリスチャンセン説をとると、基本はモジュール型で一部に再統合が起きるだけなので、iPhone,iPadも・・・というかスマフォとタブレットPCもいずれはモジュール化されるということになるでしょう。アップルがウインドウPCに押されていったという流れが繰り返されるというパターンです。実際、そのような予想を立てる人もいます。
一方、私の技術革新サイクル説をとると統合への回帰は長期趨勢なので、iPhone,iPadはそのままで、より一層の統合化すら進展しうることになります。
これを判断する上での注目点はスマフォの動向で、アンドロイドがどうなっていくかがリトマス試験紙になるように思います。現状のアンドロイドスマフォはアプリの自由度が高い点でiPhoneよりもPCに近く、いわばよりモジュール化されています。しかし、キャリアは自分のところでカスタマイズしたアンドロイドスマフォ、いわば統合されたスマフォも出してくるでしょう(ガラケー的なスマフォ、ガラケロイド)。どちらがユーザに支持されるかで将来が占えるように思います。
そのとおりですね。ただゲーム以外でケータイという成功例があります。ガラパゴスでしたがサービスの中身としてはスマフォと似たようなことをすでにやってました。RT @yanabo: @tanakatatsuo日本企業ではゲーム業界を除き、なかなかうまくできていないような。
そうですね。サービスというか「利用する側」の自由度が下がるので統合的と思います。RT @ta__ki:@tanakatatsuo "クラウド技術"は分散しているサーバ資源を統合的に扱う(雲のように見せる)こと。集中処理ではない。でも"クラウドサービス"は統合的という見方?
クラウドは提供企業側に制御が移るので、自律・分散ではなく統合的(非インターネット的)という見解もあろうかと。@ytaniwaki: インターネットの基本精神が自律・分散・協調。その延長線にクラウドがある。
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