美人の多い国

昔々、あるところに美人の多い国として有名な国がありました。

その国には、コラリー姫というとても綺麗なお姫様がいました。
まだ、あどけなさが残る12歳ですが、すでにお城の中では一番の美人となっていました。
もちろん、ここは美人の多い国として有名ですから、お城の中で働いている女使用人の面々も、みな、よその国へ行けばお姫様としてなれるくらい綺麗なものです。
しかし、コラリー姫はそれにもましてお美しかったのです。

そんな、美人のコラリー姫ですが、父親である王様には、ちょっと困った問題がありました。
それは、コラリー姫は嘘をつくということです。
それも、大きくなるにつれて嘘をつく回数も増えていき、12歳となった今では国一番の嘘つきにまで成長しました。

王様は毎日、嘘を言うコラリー姫に疲れてしまい。ときたま、コラリー姫の美しい顔を見たくないとまで思ってしまうほどでした。
そんな月日を経て、コラリー姫が15歳になって、より美しく、より大嘘つきになったある日
コラリー姫の嘘に悩まされ続けていた王様は、城内にいる美人の女使用人を見てもコラリー姫と同じ美人だからと女使用人が言ったことを信じられなくなりました。
もう王様にとっては、美人の女は嘘つきしか見ることができなくなっていました。

そこで、王様はある決断をしました。
お城の中にいる美人の女をすべてクビにしてお城の外へ追い出してしまいました。代わりに入ってきたのは皆、すべて美人とはいえないような、つまり不細工な使用人ばかりでした。
そんなことを知らないコラリー姫は、お城の中の女がいつの間にか自分以外みんな不細工になっていることに気付きこう思いました。

「ますます自分が綺麗な女になっているんだわ」

お城の中の女は、当然、コラリー姫より美人でないのは事実でした。
コラリー姫はそれに甘んじてしまい、より一層、美人になるための美容を怠るようになってしまいました。
それまでのコラリー姫は、毎日の日課であったスキンケアや王家代々受け継がれる美の秘術といった美容方法を実践しなくなりコラリー姫の肌は荒れていく一方でした。
しかし、元々の顔立ちの良さに加えて、今では、お城の中は不細工な女しかいませんから多少の肌荒れぐらいでは、コラリー姫の美人である地位が揺らぐことはありませんでした。

そんなコラリー姫もとうとう18歳になりました。
お城の前に国民を集めて壮大なお誕生日会を開くのです。
久し振りにお化粧をしたコラリー姫は、当然お化粧のノリも悪くお世辞にも綺麗とはいえませんでした。

しかし、お城の中では一番の美人であることには変わりありません。
国民の前に姿を現したコラリー姫は、自分より綺麗な女性がたくさんいてとても驚きました。そして悲しくもなりました。
今までは、自分がこの国で一番美人だと思っていたのが実は間違っていたというのですから。いつしかお城の中だけで一番であることで満足してしまった自分に悲しくなり、自分が楽な道へと進んでいたことにコラリー姫は気づきました。

コラリー姫は王様である父親に話しかけました。
「お父様、なぜ、お城の中で働いている女はみんな不細工なの。お城の外には綺麗な人がたくさんいるというのに、前はお城の中でも綺麗な人がたくさんいたわ」
王様である父親は言いました。
「それはお前が嘘つきだからだ。いつしか、お前と同じように美人の女を見ると嘘つきに見えてしまうようになったからだ」

それを聞いたコラリー姫は、すべては自分のせいから始まったことに気付き、そしてこう言いました。
「お父様、ごめんなさい。私が嘘をつくのが原因だったのね。お父様、もう二度と嘘はつかないから、だから、お城で働いている女の人を美人の女性に変えてください」

王様である父親は自分の娘の言葉を聞いて、決心をしました。
次の日、王様はお城の中にいる不細工の女をすべてクビにしてお城の外へ追い出しました。代わりに入ってきたのは皆、すべて美人の女でした。
コラリー姫は、周りの使用人の美貌の高さに負けずと飽くなき美の追求に励み、20歳のときにはまぎれもなく国一番の美人になっていました。

コラリー姫は自分がいつも美人でいたいために、嘘をつかなくなりました。
だって、嘘をつくとまたお城の中が不細工な使用人だらけになり、自分も同じように不細工になってしまうからです。

こうして、コラリー姫は国一番の美人になっただけでなく、国一番の正直者のお姫様にもなりました。